あたしは右手に握ったままだった剣を、少女を傷つけないように素早く彼方の首に突き付ける。
「2度目は無いって言ったでしょう??……死にたいの??」
彼方を睨み付けながら脅すように問えば、まるでそんな事気にしていないかのようにスッと目を細めた。
わざとらしく少女の首筋にリップ音を響かせながら、彼方は1度少女の首筋から顔を上げる。
「別に血を飲もうとしてたわけじゃないんだから、そんな物騒な物しまいなよ」
「……そんな事、信じられるはずが無いでしょう」
全ての者は、微笑みながらでも平気で嘘をつく……あたしを含め例外なんて存在しない……
「僕の言葉が信じられないなら、自分の目で確かめてみたら??」
あたしに信じる気が無いと悟ったのか、彼方はそう言って今まであたしに背を向けていた少女を反転させる。
少女には彼方しか見えていないのか少女と視線が交わることは無く、彼方は更に首元がよく見えるようにとシャツをはだけさせた。
「これ、見えるでしょ??僕はこれを付けてただけだから」
彼方が指差す少女の首筋には、白い肌に赤く鬱血したような跡がついていた。
それはぶつけたような跡ではなくて……ただ、あたしにはそれが何であるのか正確には分からなくて……
「なに、それ……??」
「"所有印"……まぁ、一般的に言うと"キスマーク"ってやつだよ。僕のモノって証」
「キスマーク……??」
「あれ??分かんないんだ」
突然浮かんだ疑問に、思わず彼方に対する警戒が緩んでしまったみたいで……
「なら……僕が実際に付けてあげようか??」
クスリと微笑む彼方がすぐ近くまでに来ていることに、全く気付かなかった――――……

