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「やっと来たんだ??待ってたんだよ……蒼ちゃん」
白夜の視線をしばらく背後に感じながら、全速力で彼方のことを追い掛け始めて間もなく。
視界の端にパッと突然現れたハニーブラウンの髪と、男子にしては少し高めの暢気な声。
気配の全く無かったことに驚くと同時に、待っていたという言葉に違和感をおぼえた。
「全く、蒼ちゃん達も良い趣味してるよね。覗き見に盗み聞きなんてさ」
「……彼方」
剣を握り締めたまま彼方を見つめれば、意外なことに視界に映ったのは彼方ひとりではなかった。
「ふぁ、ん……かなたぁ」
彼方の首に腕を回すような態勢であたしに背を向けている少女が、彼方と深い口付けを交わし喘ぐような甘い声をあげていた。
口付けを交わしながらあたしを見つめる彼方の瞳は、さっきの永遠と同じ雰囲気を纏っていて……。
「ッ……何、して」
挑発的に何度も繰り返される深い淫らな口付けに、あたしは顔を反らしながら独り言のように小さく呟いた。
「は、ぁ……んぅ」
「蒼ちゃん、顔赤いよ??他人がキスしてんの見ただけで顔赤くするなんて、ウブで可愛いところもあるんだね」
少女の首筋に顔を埋めながらクスリと笑う様は、可愛いとはかけ離れた妖艶さを含んでいて……
一瞬、彼方が少女の首筋に口を近付けていることに気付かなかった――――……

