†Bloody Cross†







――――
――――――……


「やっと来たんだ??待ってたんだよ……蒼ちゃん」


白夜の視線をしばらく背後に感じながら、全速力で彼方のことを追い掛け始めて間もなく。

視界の端にパッと突然現れたハニーブラウンの髪と、男子にしては少し高めの暢気な声。

気配の全く無かったことに驚くと同時に、待っていたという言葉に違和感をおぼえた。


「全く、蒼ちゃん達も良い趣味してるよね。覗き見に盗み聞きなんてさ」


「……彼方」


剣を握り締めたまま彼方を見つめれば、意外なことに視界に映ったのは彼方ひとりではなかった。


「ふぁ、ん……かなたぁ」


彼方の首に腕を回すような態勢であたしに背を向けている少女が、彼方と深い口付けを交わし喘ぐような甘い声をあげていた。

口付けを交わしながらあたしを見つめる彼方の瞳は、さっきの永遠と同じ雰囲気を纏っていて……。


「ッ……何、して」


挑発的に何度も繰り返される深い淫らな口付けに、あたしは顔を反らしながら独り言のように小さく呟いた。


「は、ぁ……んぅ」


「蒼ちゃん、顔赤いよ??他人がキスしてんの見ただけで顔赤くするなんて、ウブで可愛いところもあるんだね」


少女の首筋に顔を埋めながらクスリと笑う様は、可愛いとはかけ離れた妖艶さを含んでいて……






一瞬、彼方が少女の首筋に口を近付けていることに気付かなかった――――……