「胸騒ぎがするの……。早く彼方を追わないと」
腕から手を放す気の無い、むしろ更に痛いほど強く掴んでくる白夜に懇願するように呟く。
まるであたしの言葉など耳に届いていないかのような真っ直ぐな白夜の瞳から逃げるように、顔を彼方が遠ざかっていく方に向け自分の腕に力を更に込める。
あたしが白夜に力でかなうはずもないのだけど……。
「あいつは俺が追う」
念を押すかのように同じ言葉を繰り返す白夜の言葉をじっと聞いていれば、重く口を開いた。
「俺も、胸騒ぎがしてならない……しかも、あいつは今までの奴らとは違う」
もうそこには姿無い、彼方が去っていった方向を見やりながら呟く。
今までと違うと言う言葉は、さっき彼方が気配を消しているはずのあたし達に気付いたことを言っているんだろう。
「それに、さっきのあいつの言葉を聞いただろう??記憶を消せる、と……」
苦々しく呟く白夜に視線を向けると眉間に深く皺をよせ、あたしを見つめていた。
心配……してくれているのだろうか??
「俺の力ですらどうにもできぬ蒼が追うくらいなら……代わりに俺が終わらせてこよう」
でも……例え白夜が心配してくれていて、あたしが彼方を追うことで更に心配をかけるとしても……。
「……蒼!!」
「ごめん、白夜……。でもこれは、あたしがしなくちゃいけない事だから」
白夜のあたしの腕を掴む力が緩んだ一瞬を突いて、あたしは彼方を追うために走りだした――――……

