胸騒ぎを抑えるかのようにギュッと胸の上の制服のシャツを、剣を持たない空いている片手で握り締めた。
「どうした、蒼??」
「ッ……なんでもない」
心配そうな表情をした白夜が視界の端に映って、あたしは瞳を伏せ深呼吸を繰り返す。
あたしの元に暗殺者や侵入者が来ることは珍しくなくて……むしろ、日常茶飯事と言える。
それでも……こんなふうに胸騒ぎがしたのは初めてで……。
「んじゃ、僕は先に教室に戻るよ。その子の記憶消しちゃうから、ちょっと貸してくれる??」
始めから変わらぬ暢気なそんな言葉が聞こえて、落ち着こうと伏せていた瞳を驚きで彼方に向けた。
そこに映ったのは歩き去る彼方の後ろ姿で……。
それを追い掛けようと足に力を込めたけど、それは白夜があたしの腕を掴むことで阻止された。
「白夜……」
「あいつは俺が追う。蒼はここに居ろ」
白夜を見上げれば、あたしを見返す紅い瞳も真っ直ぐにあたしを見つめていて……。

