「えっ……?ここで食べるの??」
「うん。だって僕、お腹空いちゃったし……それにここなら誰も来ないでしょ??」
ザワリと……ハニーブラウンをした、暢気な声音でそう呟いた張本人の纏う雰囲気が変わる。
あたし達が居る方向からは吸血鬼の……彼方の表情は見えず、ただ少女の脅えるような姿が見えるだけ。
それを見ただけで、彼方が一体どんな表情をしているのか理解できて……それと共に彼方の考えが理解できない。
「確かに、誰も来ないだろうけどッ……」
あたしの瞳に映るのは恐怖から逃げるように後退る少女と……
「俺も居ること、忘れないほうがいいぜ??」
背後からその姿を、まるで獣が獲物を狙うかのような瞳で見つめる野獣の姿。
「……っ!!離してッ!!」
「そりゃ出来ねぇな。あんたから食事に誘ったんだ……俺らの"食事"にも付き合ってもらうぜ?」
人間が吸血鬼に力でかなうはずもないのに、抵抗を続ける少女をいっそ哀れに思う。
早く少女を助けようと木々の間から出ていこうとしたあたしの耳に、挑発的で陶酔を帯びた声が聞こえて動きを止める。
「先に喰っちまうけど、構わないよな??」
永遠が先に喰べてしまうのならすぐには助けられないと、気配を消したまま動きを止める。
「……ッ?!!」
気配を、消していたハズ……なのだけれど……
確かに一瞬……あたしに背を向けていた彼方が、妖しい笑顔を浮かべこちらを振り向いた――――……

