「……!!」
あたし達が居る場所に近づく複数の何者かの気配に、あたしは白夜の頬に添えていた自分の掌をビクリと震わせる。
あたしが何者かの気配に気付くよりも早く白夜はその存在に気付いていたようで、気配がある方をまるで見定めるかのように見つめていた。
「何者かがこちらに近付いてきているようだな。これは……人間と吸血鬼か」
「人間と吸血鬼……」
白夜の言葉を復唱してみれば、脳裏に浮かぶのはひとつだけ。
吸血鬼と人間がこんな人気の無いところでする事なんて、思い浮かぶ限りひとつしかない。
「このような場所に来るまで何をされるのかに気付かぬなど、人間も愚かなものだ」
その口調は完全な呆れが含まれていて、瞳は冷酷さが見て取れる。
白夜の人間に対する侮蔑を含んだ言葉に、即座に否定の言葉を述べないあたしも同じことを思っていたのかもしれない……。
「それでも……あたしは」
「分かっている。助けなくてはならないのだろう??」
"人間を助けなくちゃいけない"と続けようとした言葉を、白夜によって遮られる。
さっきとは打って変わって優しい声音の白夜を見ると、そっと太刀に手をかけていた。
あたしは白夜の問いに答える代わりに剣を現し、強く握り締め……
「ここら辺でいいかなぁ……」
暢気な声が聞こえてきたほうを、強く睨み付けた――――……

