†Bloody Cross†



『そうやって笑っていろ。無理して笑うことは無いが、やはり笑っていたほうが美しい』


囁くような柔らかい声音で紡がれた言葉があたしの耳に届き、言葉の意味にあたしは再び顔を染める。

立ち上がり闇色のローブに付いた砂埃を払うふりをして、顔を見られまいと顔を俯かせる。

白夜はそんなあたしの事情など気にする様子も無く、言葉を続ける。


『今更、帰れなどと言ってくれるなよ。見初めた女が泣く姿を見ては、おちおち帰れん』


『見初め……?!!』


その言葉に思わず顔を上げる。

重ねられた白夜の言葉に、顔に更に熱が集まる感覚がしてさっきより顔が赤くなっていく。

あたしの赤くなった顔を見ても、白夜は馬鹿にするでも無く、変わらず微笑んだまま……。


『驚くことはないだろう。俺は好きでもない奴に一晩中付き合うほど、暇ではない』


さも当然と言ったように言葉を吐き出す白夜に、あたしは赤くなった顔のまま呆気にとられた。


『これからもお前の傍にいる。蒼がなんと言おうと、な』


有無を言わせないような白夜の言葉に、あたしはただ首を縦に振り頷くことしか出来なかった。






その瞬間から、あたし達は行動を共にするようになった――――……