「……っ?!てめぇ、いつの間にッ!!」


俺が、人がこんなに近くに来るまで全く気配に気付かなかった……?!

クソッ……さっきどう考えても普通じゃねぇ奴に会ったばっかりだってのに、油断した!!

驚きと困惑から反射的に後ろを振り返ろうとすれば……






――――ガタンッ!!






背中に衝撃が走り、目前にあった扉に押さえ付けられる形で身動きがとれなくなった。


「こちらを向くなよ、吸血鬼」


「な……??んだと?」


なんで……俺が吸血鬼だって知ってんだ?

フェイクをかけて、俺に自分からボロを出させるつもりか??

横目で俺を押さえ付けているソイツの顔を見やれば、紫がかった闇色の瞳は揺るぎない意志と俺に対する明らかな殺意を含んでいて……。

交わった視線、俺に真っ向から向けられるその視線に作為なんて感じられない。


「てめぇも蒼の仲間か……」


俺もフェイクもハッタリも無しに、相手に聞こえるように呟いてみせた。


「……お前には関係の無い事だ」


俺の呟きを聞いた時、少しだけ……本当に微かに眉根をよせたのを俺は見逃さなかった――――……