――――カチッカチッカチッ……






「……時計塔か??」

回復した体力を一気に奪うような眩しい光に次第に目が慣れ、視界に映った黒い影の正体は少し古い"時計塔"。

見た目が少し古いそれは、少しの一変の狂いも無く時の旋律を刻んでいた。

時計塔の周りの草が綺麗に刈りそろえてあって、木が一本も無いところを見ると、ここは誰かが管理してるってことか……。


「どうすっかな……」


学園から離れたこんな場所に、まるで隔離でもするかのように存在する"時計塔"。

時計塔ってのは普通、時間を正確に理解できない人間に時間を知らせるためにあるもんだろ??

それなのに、こんな人気の無い場所にあったらどう考えても意味がねぇ……。


「入ってみるか……」


怪しい場所はいずれ自分の手で調べる予定だし、人の気配の無い今ならこんな身体の状態でも大丈夫だろ。

しばらくの思案の後、時計塔の中に入ってみることにした俺は改めて時計塔に目を向けた。

金で縁取られた、細工の凝ったアンティークのような造りの時計。

全体的に少し古い、結構な高さのある洋風の幻想的な雰囲気をした塔。


「随分と分かりにくい扉だな」


時計塔の中に入るための扉を探せば、案外容易く見付かり少し驚く。

特に目立った装飾がされているわけじゃなく、むしろまわりに溶け込むようにある扉。

俺は周りに人の気配が無い事に意を決し、扉にゆっくりと近づく。






――――扉に手をかけた瞬間……






「そこで何をしてる……」






背後から、殺気の籠もった低い声が聞こえてきた――――……