閉め切った格納庫は、油と鉄の匂いで充満していた。 ツンと鼻をさすきつい匂いに少しくらくらする頭を抱え、ゆっくりと機体に向かう。 飛ぶのに必要のないものが撤去され──もしかしたら大切なものさえ削ぎ落とされてしまったかもしれない灰色の機体は、てらてらとした流線型を示しながら、じっとそこに鎮座していた。 あちこち剥げた塗装を派手な迷彩で隠し、傍目からでも『無抵抗な特攻機』と分かるその外装。 敵には脅威と畏怖を。 味方には憧れと希望を。 この機体が与え、象徴していく。