「い…いや。ごめん」

「いやいや。大丈夫だよ。風瀬くんの意外な一面が…」

「李衣ってば、正直も…の…ってあれ?は…」

「は?」

視線が、あたしの後ろに向いている磨緒。

「どうしたの…?磨緒」

あたしは、磨緒が見ているほうへ向く。

「まっ麻咲っ見るなっ」

風瀬くんの焦った声が聞こえたのにも関わらず、あたしは磨緒の視線を辿る。



……嘘っ…

なっなんで………?

あたしはただ、呆然と、人の行き交う道の隅を見ていた。

そこには、あたしの愛しい人がいて…

それも…綺麗な女の人と…一緒に。


(浮気)

1つの不安は、フタから溢れだし、心の中で黒く広がった。

嫌…嫌だよ…

あたしは、踵をかえし、走りだした。

もう、わけがわからなかった。

ただ、心を落ち着かせられる、何かに縋りたかった。