公民館の一番奥の右側の部屋に入ると、椅子には瑞穂と正信と鈴音が座っていた。鈴音はテーブルに顔を突っ伏していることもないので、少し落ち着いたのかもしれない。

 陸と章吾と春樹が戻ってくると、瑞穂は真っ先に訊いた。


「どうだった?」


 何て答えたらいいのか分からずに、陸だけでなく章吾と春樹も言葉を探しているようだった。

 すると、鈴音が章吾の顔を見据えた。


「お兄ちゃん、もしかして誰もいなかったの?」


 章吾は鈴音を一瞥すると、視線を床に落とした。

 誰もいなかったといえば、おのずとこの中に犯人がいると宣言するようなものだし、何も答えなければ余計に皆の不安感を募らせるだろう。

 陸は言葉を慎重に選びながら、穏やかにゆっくりとした口調で云った。


「皆さん、村には誰もいませんでした。でも犯人が村から既に出ていったという可能性もあります。しかし、わらべ唄の二番が書かれた手紙があった以上、警戒した方がいいでしょう。ですから、雨が止むまでは、なるべく一箇所に皆でいた方がいいと思います」