陸は、魔念村出身の人達にケムンドウなど存在しないと主張したところで、それを信じてもらうのは難しいと考えた。そして美紀がいなくなった前後の話しを訊くことにしたのである。確か美紀がいなくなった時、この村にいたのは鈴音、真優、正信の三人だったはずだ。


「少し話しを訊かせて欲しいのですが、美紀さんがいなくなる前、彼女に変わった様子はありませんでしたか? どんな些細なことでも結構ですので」


 正信が何かを云おうと口をパクパクさせていたので、陸はなるべく穏やかに声をかけた。


「正信君、何か思い出したかな?」


「あ、あの、俺……。春樹がいるところじゃ云い辛いんですけど」


 正信は春樹を一瞥するとまた俯いた。

 そんな正信を見た春樹は、陸のように穏やかな口調で云った。


「正信、俺に気なんて遣わずに、どんな些細なことでも思い出したことがあるのなら云ってくれないか? 美紀がいなくなった時、俺と瑞穂と章吾は離れてたから少しでも知りたいんだ」