魔念村殺人事件

「一つ目の峠に入る前で、コンビニというか、山岸商店っていう店があるから、そこ寄るつもりだよ」


 春樹は陸にそう説明すると車を加速させた。

 やがて峠の手前に、春樹の云った通り店が一軒見えてきた。近づいていくと、ペンキが薄くなった看板に『山岸商店』と書いてある。

 そして『山岸商店』の横に車を停め、陸と春樹は降りて伸びをした。


「ふ~。やっと何か食べれるな。それにしてもここまで一時間か。峠三つ越えるには、後どのくらいかかるんだ」


「確かにお腹空いたよな。魔念村に着くのは、ここから二時間弱ってところだな」


 春樹が澄ました顔で、まだ二時間弱って答えたことに、陸は「遠いなぁ」と溜息混じりに云うと、そんな陸を見て春樹は笑った。


「遠いだろ。でも俺は、そんな遠くから東京に出てきたんだよ」


「すげぇよなぁ。二十四時間コンビニもないしな。まぁいいか、店入ろうぜ」