魔念村殺人事件

「暑いなぁ。やっぱり南は暑い。それに雨降りそうだけど、土砂崩れとか大丈夫かな」


 陸は助手席の窓から外を見て云った。

 そんな陸を横目で見ると、春樹は笑いを含んだ声で答えた。


「魔念村は山に囲まれているから、着いたらもっと暑いぞ。土砂崩れだが、それは大丈夫だろう。前に何度も土砂崩れになったらしく、かなり舗装はきちんとしてあるみたいだ。しかし、雨が降るとなぁ」


「雨が降ると何だよ?」


「いや、何でもない。大丈夫だろう。天気予報じゃ曇りってことだったしな」


 春樹の奴、何か云いかけたけれど、たいしたことじゃないのかな。

 それからしばらく陸は景色を見ており、春樹は快調に車を走らせていたのだが、陸はふと腕時計を見て唐突に云った。


「もう他の五人は、魔念村に着いている頃だな」