春樹と章吾と正信の三人は泣き叫び、沼の淵に膝から崩れ落ちた。

 瑞穂の死に対するベクトルは変えられなかったのか……。美紀が生きていたなら、こんな結果にならなかったかもしれない。もし両親が死ななかったら……。

 陸は三人の後ろに立ち、静かに涙を零していた――。

 その後、四人で再び魔念峠を越え『山岸商店』に着くと、おじさんに頼み、警察を呼んでもらった。

 店のおじさんは、陸が警察に電話している時、話しを聞いていたようだったが詮索することもなく、四人と共に警察が到着するのを、黙って待っていてくれた。

 やがて、けたたましくパトカーが数台現れ、再び警察と共に魔念村へと向かい、それからの四人は警察の質問に答えるだけで、まともな会話など出来るはずもなく時間だけが過ぎ去る。

 こうしてその日はK県の宿泊施設で一泊し警察に対応すると、翌日、春樹と章吾と正信の三人はK県の実家にそれぞれ向かった。

 その日、飛行機でK県を後にしたのは陸だけだったのである。

 飛行機が離陸してまもなく、陸はふと窓の外に視線を向けると、山に囲まれた小さな村が見えた。それは紛れもなく魔念村であり、美紀から始まり、真優、鈴音、瑞穂の四人が死んだ場所でもある。少しずつ上昇する飛行機は魔念村を離れた。陸は見えなくなるまで窓の外から視線を動かさず、村が見えなくなった瞬間きつく目を伏せた。

 悲しい事件はこれでようやく終わったんだ。