陸は何とも云えない気持ちだった。ふと春樹達を見ると、俯き小刻みに震えてさえいた。

 結局俺は春樹の力になるどころか何も出来なかったのか……。ケムンドウの手紙がきた時点で、危険を察して皆を引き止めることだって出来たかもしれない。この村でわらべ唄の手紙を見た時だって、あれが殺人予告だと気付いていたら――。

 ぐるぐると、この村に訪れる前から今までの記憶が駆け巡っては陸を苦しめた。


「石川さん、鈴音を殺した凶器……。それも石川さんが推理した通りよ。物置に入っていたロープ。何だか吹っ切れたわ。もう思い残すことはないもの」


 瑞穂は悲しい微笑を陸に残すと、止める間もなく底なし沼に飛び込んで行った。


「瑞穂さん!」


 陸が叫んだのも虚しく、瑞穂は沼に浮かんだ美紀の骨と一緒に沈み、浮き上がってくることはなかった。


「瑞穂ー! 瑞穂ー!」