先に鈴音の部屋から出た陸は玄関に向かった。

 引き戸を開けるとギギギっとやはり音がする。真優がいなくなった時、こんなに音がすれば目が覚めそうなものなのに。首を傾げつつ外を見ると薄っすらと明るく、雨は小降りになっていた。

 それから陸は足跡を確かめたり、外からも引き戸を開けたり閉めたり、よく推理小説であるような掛け金のトリックなども試したりした。

 外から誰かが入って犯行を行ったとはどうにも考えにくい。犯人は黒田家にいた者の中にいるとしか考えられない……。

 そこで陸は思考を働かせ、一つ一つの出来事を思い返したのである。

 あれ、変だ……。それに不自然じゃないか。共通点もある……もしかしたら……。しかし証拠はない。ここには鑑識などいないのだから。 

 陸の脳裏では、推理の欠片が集まってきていた。

 家の中に戻ると、鈴音の部屋から春樹達が肩を落とし出てきたところだった。


「皆さん、お茶の間に集まって貰えますか?」


「でも家の中に犯人が隠れてるかもしれないですよ」


 章吾は顔をしかめたが、陸はハッキリと云った。


「犯人は隠れていません。ですからお茶の間へ」