陸は、まるで学校の先生に喫煙が見つかり、慌てて白状した生徒のように答えた。 


「すみません。タバコ吸ってました」


 すると章吾と瑞穂は、くすくすと笑い声を洩らした。


「別にいいんだよ。俺と瑞穂も落ち着かないから、タバコでも吸おうかって話してたし」


「そうよ。タバコが嫌いなのは真優だけだったわね」


 瑞穂が真優の話しを懐かしそうに云うので、章吾と春樹は一瞬暗い表情を見せた。

 この場が暗くなってしまうのを恐れた陸は、慌てて話題を変えたのである。


「皆さんはこの村に住んでいる時、携帯電話を持ってなかったと聞きましたが、実際連絡はどうやって取っていたんですか?」


 すると章吾は黒縁眼鏡の奥で目を細めて笑った。


「何だ、そんなことか。直接家に訪ねて行って話すとか、急用であれば自宅の電話ですよ」


「そうそう、今は村を出て、携帯が使えるから本当に便利なもんだよ」