足早に廊下を歩き、正信の部屋に着くとノックをした。

 返事がなかったので、寝ているのかと思い、陸は引き返そうと方向を変えた瞬間、正信の掠れた声が微かに聞こえた。

 慌てて引き戸を開けると、正信は布団に仰向けになったまま陸の顔を見た。


「もしかして今のノックで起こしてしまったかな?」


「い、いいえ。少し前に目が覚めたんです」


 正信の顔はまだ赤く、まだ熱は下がらないのだろう。

 話すのは手短にしなければ。そう思った俺は正信に訊いた。


「具合悪い時に申し訳ないんだけれど、春樹が村を出た後、村には正信君達四人が残ったよね。四人になってから、美紀ちゃんや鈴音ちゃんに変わった様子なかったかな? 些細なことでもいいんだけど、教えて欲しいんだ」


 正信は目を閉じ、どうやら思い出そうとしているようである。

 しばしの沈黙の後、ようやく目を開け、掠れた声で答えた。