「別に何もないけど?どうして?」

「ううん、なんとなく。最近妃那元気なかったから」

「それは瑞樹先輩のせいじゃないの知ってるでしょ?

───っていうか、最近文化祭で忙しいからあんまり接点が無くてねー」



たこ焼きを飲み込んでからそう答える。

夏乃は心配そうにあたしを見て、それから「そっか」と小さく口角を上げた。



「今日は?一緒に回らないの?」

「うーん、瑞樹先輩責任者?みたいのやってるらしくて、暇が無いんだって」



瑞樹先輩が責任者をしているのは本当だ。

それは以前メールしていたときに聞いたことがある。

ただ、暇が無いかどうかは知らない。あくまでもあたしの予想、言い訳。

あたしの答えを聞いた夏乃は、「そう」と視線を逸らす。

その横顔に覚える違和感は・・・何?



「あ、夏乃!妃那!」



階段の前を通りかかると、上から声が降って来て顔を上げた。

踊り場にいる人影がどうやら呼び止めたらしい。

逆光でよく顔は見えなかったけど、声で分かったから確認するまでもなかった。



「海斗くんも休憩時間?」

「おう。それより妃那、俺お前を探してたんだ」

「え?」

「瑞樹先輩が、探してたぞ」



瑞樹先輩が?

あたしは内心反復して首を傾げた。

瑞樹先輩と最近はメールも電話もしていない。

一体何の用だと言うのだろう。