「「おはよう、拓巳(君)」」

「俺は何も見えない、聞こえない」

「ちょっとそれはないんじゃない?」

「妃那以外は入れたくないのね」

「“ちょっと拓巳っ!あたしのこと入れないとかどういうつもり!”」

「変なこと言うんじゃねぇ、この双子!!」



つーか海斗のヤツ、妃那のモノマネクオリティ上がってやがるし!!

俺は一通り怒鳴ってから、まったく帰る気の見えない二人にはぁとため息を付いて、

招き入れるようにドアに背を当てた。

(よく考えてみりゃ、妃那だったら窓から来るな)

(それさえ思い当たらなかった俺の頭はどうかしてる)



「入れよ」

「お邪魔しまーす!」

「おじさんとおばさんは?」

「土曜は仕事」



二人そろって玄関できちんと靴をそろえて上がる。

その揃え方までもが完全に一緒で、さすが双子だと小さく笑った。



「飲み物は?」

「いいよ。勝手に出すからお気遣いなく」

「勝手に出すのか」



リビングのソファに座った二人に一応社交辞令的に聞くと、

図太いんだか図々しいんだか分からないあいかわらずの海斗の返事。

夏乃はそんな言葉に苦笑しながら、



「とりあえず拓巳君は洗面所行って来たら?」



と言った。

いや、確かにパジャマだけど起きたてだって言ったか?

首を捻ると、夏乃は小さく笑って自分の前髪の右側を指差した。



「ね・ぐ・せ」

「!!」



慌てて俺も自分の髪を押さえると、確かにそこにある少し弾力のある感覚。

寝癖なんて今更恥ずかしがる関係じゃないが、なんとなく女に見せるのは気が引ける。

思わず顔を引きつらせたのが分かったんだろう、夏乃と海斗はそっくりな顔をして笑った。

あー・・・双子が来た時点で、俺の今日は終わった気がする。(あらゆる意味で)

はぁ、と息が抜けきるようなため息を付いたら、

「写真に撮ったら高く売れそうだわ」と夏乃が真っ黒な笑みでどこからともなくデジカメを取り出したから、

俺は逃げるように洗面所に駆け込んだ。

(アイツならやりかねねぇ!!)