女性は、そんなリヒトさんの視線を受け、にこりと笑っていなす。

「あら…うふふ。怖いのね。…でも、そう…」

女性は意味深な言葉を紡ぐ。

「この子が、そうなのね」「…やめろっ!!」

リヒトさんが慌てたように叫ぶ。
こんな余裕のないリヒトさんは、初めてで。

とても、嫌な予感がした。

「うふふ。私の名前は、シエル。よろしくね、カオ?」

妖艶で、美しい女性は色っぽい仕草で手を振り、音もなく去っていった。

「…大丈夫でしたか?」
リヒトさんが私の肩を擦りながら、聞いてくる。

どうやら、知らずに震えていたらしい。

うん。と頷きながら、ふと女性―シエルがいた場所に目をやると、男性が2〜3人くらい倒れていた。

どうしたのかと、側まで寄ってみる。