思ったより遅くなった。
リヒトさん心配してるだろうな、と思いながら、帰路を走る。


近道をしようと、いつもは通らない公園を横切ることにする。


街灯の届かない、公園の道は、月明かりに照らされている。

思ったより、明るい…。
月が今日は、とても明るく感じる。
上を見上げると、今夜は満月のようだった。

どうりで明るいはず、と思いながら、先を急ぐ。


ふと、公園の脇。
木々の奥に目線がいった。
2つの影が寄り添うように揺れている。

カッと頬が赤くなる。
他人の、そういう生シーンは初めて見た。

見ちゃいけない、と思うのに、どうしてか足が動かない。そのまま、食い入るように見てしまう。


その瞬間、影が一つ崩れ落ちた。
えっ?何?

目を凝らして、よく見てみると、髪の長い女性が1人立っている。

暗くて、よく見えないはずなのに、何か分かる…?

おかしい…と思った、その時、女性と目があった。

にこり、と笑うその顔に背筋が凍るような気がした。


『逃げろ』
まるで、本能のように頭によぎる。

けれど、足がすくんで動かない。

女性が少しずつ、近づいてくる。

怖い…!

どうして、こんなに怖いのか、分からない。
けれど、とにかく、怖くてたまらなかった。


『リヒトさん……!』

無意識に、助けを求めた。どうしてかな?助けてくれる気がした。