「……それならいいけど。鈴さん、すいませんが、姉さんのこと見といて下さい」

 大丈夫だと言っているのに、多郎は教室の一番後ろの席に座っている男に呼びかけた。

「何だ、香里、体調でも悪いのか」

 返ってきた言葉は、ざっくばらんながらも、心配してくれているのが分かる。

 鈴こと、蜂須賀 鈴目(はちすか すずめ)とは、香里たちと家が近く、昔から付き合いがある。

 この狭い村で、兄妹のように育った間柄だ。