目を覚ますと、保健室の天井が見慣れた天井に変わっていた。

 ああ、わたし、家に帰ってきたんだ。

 香里は、そう思うと同時に、学校であった出来事も夢だったのじゃないか、と考える。

 ぼんやりと重い頭で、考える。

「姉さん、起きたのか?」

 呼ばれて、布団に寝そべったまま顔を向けると、多郎が真剣すぎるほどの目で香里を見ていた。

 その真摯な眼差しが、あれは夢ではなかったのだと告げている。

「多郎ちゃんが家まで運んでくれたの?」

 ああ、と言葉少なく答える多郎からは、痛いほどに香里を案じているのが伝わってきた。香里の胸も痛くなる。

「そう、ごめんね」

「姉さんが謝ることじゃない」

 怒ったように言う多郎に、じゃあ誰が謝ればいいんだろうと思った。