「そう言ってるじゃん……!」 話を聞いてなかったんだろうか、むかむかしてきた。 姉さん、落ち着いて、と多郎がなだめるのも気に食わない。 「多郎ちゃんは? 多郎ちゃんはどう思ってるの、今回のこと」 一緒に暮らしてたのが、いきなり離れ離れなんて。 ああ、多郎ちゃんは知ってたんだっけ。 いきなりじゃないんだ、わたしが朝蜘先生んちに、お嫁に行くなんてことは! とげとげしい視線を向けられた多郎は、うつ向いてしまった。 香里は、顔をそらさない。