「だから、先生……お願いします」 視線を向けられた朝蜘は、深く溜め息を吐いた。 「さっきから、話すと言うのに聞かないのは、お前たちだろう」 言って、着物の袂に腕を入れて組み、眉根を寄せる。 その朝蜘の姿に、香里は身を小さくするばかりである。 「館花の歴史は、数百年の歳月をさかのぼる」 香里のおばあちゃんの、そのまた、おばあちゃんの…… もっともっと遠い遠い、昔の話。 「その頃は、この世界と異界と境は、今より曖昧だったと伝わっている」