花の家

「変なの。怖いなら逃げればいいのに」

 鈴の足が震えているのを見て、揚羽は笑う。

くすくすと、子どものように。

「……逃げられるかよ、チクショウ!」

 自分に言い聞かせるように叫び、鈴は上着を脱ぎ捨てた。

半袖から覘く腕は、引き締まっていたが、ひどく無防備に見える。

その先の右拳を握り、鈴は力を込めるように唸った。

「逃げないなら、死んでよ。君、邪魔なんだもの」

 揚羽は、台詞以上の感情を感じさせないまま掲げた手を振り下ろそうとする。

 その死を与える手を。