本当に愛おしい君の唇

 いつも美味しい料理を口にしている。
 

 パーティー会場を後にした治登が直美を新宿の高級レストラン<バルベール>へと連れていった。


 確かに会場ではあまり食べてない。


 いくら立食式と言っても、治登はこういった場では酒を軽く飲んで、一皿分の料理を食べれば済むからだ。


 これから口直しの食事をし終わって、いざホテルにでも誘おうかという気分になる。


 治登は普段から結構ストレスを溜め込んでいた。


 有希は若い男と浮気しているし、治登は性の捌(は)け口が欲しかったのだ。


 いや、性の捌け口という汚い言い方ではなく、話し相手と言った方が正確か……?


 治登は会場のホテルを出て、建物前の広場でタクシーを拾う。


 後部座席に先に直美を乗せ、誰も見ていないことを確認して自分も乗り込み、


「新宿の料理店バルベールお願い」


 と言った。