「うん。健康体だ」


 治登がそう言って、振り返り、


「もうちょっと寝てよう」


 と言葉を重ねた。


「ええ」


 二人で並んで眠る。


 治登は有希が直仁に抱かれていることを想像するたびに、嫌気が差した。


 まあ、夫婦で互いに不倫し合っているのだから、お相子なのだが……。


 それと同時に会社の人事の件も脳裏をよぎる。


 面倒なことが重なるなと思いながら……。


 こんなことは直美には一切言わないし、半分は社の機密なので言えない。


 治登は他言無用な出来事をたくさん抱え込んでいたのだ。


 これが大会社の取締役専務の実態である。