本当に愛おしい君の唇

覚悟もあった。


 実はルーデルにもバカな社員がいるのである。


 古賀原(こがはら)裕文という男だった。


 古賀原は取締役ではないのだが、課長職である。


 いずれ治登が取締役社長に収まれば、古賀原を遠慮なしに切るつもりでいた。


 古賀原は今の社長である大多勇が招き入れた男だ。


 何でも以前の会社をリストラされて、ノコノコとルーデルに入ってきたらしい。


 だが、課長といっても閑職(かんしょく)なのだった。


 所詮はフロアにいて、新聞か週刊誌でも読んでいれば一日の勤務が終わるのである。


 治登は古賀原をとんでもない給料泥棒だと思っていた。


 それに大学も地方にある五流ぐらいの私大で、在学中もろくに勉強せずに部活ばかりしていたらしい。


 治登は古賀原はルーデルに必要ないと思っていた。