本当に愛おしい君の唇

が覚めた。


「美味しいね」


「でしょ?これ、ブランド品なの。大手の百貨店に行かないと買えないんだから」


 直美がそう言い、インスタントコーヒーのビンを手に取って、商標名を指差す。


 確かに日本で作られたもので、幾分値の張るブランド物だった。


 治登はコーヒーを飲み終えると、カップをテーブルに置き、軽く息をつく。


 さすがにまた今日から仕事だ。


 忙しい一日が始まる。


 直美も普段の業務に戻るので、しばらくは会えそうにない。


 ただ、もうお互い同棲生活をし始めてもいい頃だった。


 治登は時折、都内にある物件をネットで見ながら、探すのに夢中になっている。


 もし自分が彼女と一緒になれば、有希と直仁はくっつくだろうし、直美の旦那の洋介も不倫相手の女子大生である中谷佳織と一緒になるだろうと思っていて。