ひかるが意識をとりもどすと、ホテルの寝室のベッドの上でした。
ソファに、うっすら笑みを浮かべる裕文が座っていました。
「やぁ、お久しぶり。」
「誘拐ですか・・・。」
「さぁ、誘拐というのか、返してもらったといってもいいんじゃないかと、僕は思っているんですけどね。」
「千裕様いじめなんですか?」
「いじめ?そんな生易しいものでもないよ。
あいつは僕の母さんをとことんつらい目にあわせたヤツだからね。
父さんは結婚前にあいつの母親と縁をきった。
だから母は父さんと結婚したんだ。
企業の利益を考えた政略結婚といっても、母は父を愛していたんだ。
お見合いのときに一目ぼれだったそうなんだ。
しかし・・・父さんは僕が8才のときにあいつをひきとった。
それからだ・・・母が、僕の母が優しく接してくれなくなっていった。」
「裕樹さんは何と言っているんですか?」
「兄は裏切り者だ。千裕と何を話したのか知らないけど、すっかりまるめこまれてしまって、そして自分はさっさと家を捨てた行動に出たんだからな。
実業家の跡取り息子のすることじゃない。」
「でも、裕樹さんはいろいろ考えて帰ってきたじゃないですか。」
「ああ。それも千裕の味方としてな。
両親同じくする兄とは思えないヤツだ。
兄は自分を産んでくれた母を尊敬していない恥知らずだよ。」
「そんな言い方って・・・」
「ま、僕と母が力をあわせて、千裕をいたぶれば、こんなものだということを今回はわかっただろうけどね。」
「じゃ、あの女性とついてる人たちは、もどってもらえるの?」
「そんなわけないだろ。あの女性は千裕の妻になる女性だからねぇ。
そして、君は・・・僕の妻か・・・妾になる。
千裕が愛した女を汚せば、かなりのダメージになるだろうしね。」
「どうしてですか?裕文さんは私にプレゼンの手伝いをしてほしいとおっしゃいました。
正々堂々と仕事の場で決着をつけるのではなかったんですか?
それで勝たないと意味がないのでしょう?」
「君は千裕の援護を絶対しないと言えないのではないのかな?」

