元気あげます！

吉岡は仕事帰りに立ち寄るようにやってきました。

屋敷にもどるまでの事情、裕樹たちのことなどは千裕から連絡を受けていたので、ひかるの職場と称した事務所はたたんでなくなったとのことでした。


「ってことは裕文様は？」


「ご自分の会社のオフィスにもどられました。・・・ただ・・・」


「ただ・・・どうかしたんですか？」


「ご両親に何か連絡されていたんですよ。内容まではよくききとれなかったんですが、偶然電話でお話されているのをきいてしまって・・・。

千裕様の名前を言っておられたのは聞こえたので、こちらに何か起こっていないかと心配になりまして。」



「ご両親にだったら、近況とか話してたとかじゃないんですか？」


「いえ、おもに、お母様とお話されていたようなんですが・・・。
裕文様は過去にお母様に何かご相談された後には、必ず千裕様にとんでもないことが起こるのです。
おそらく、奥様は裕文様を溺愛されておられるんだと思います。

妾の子なのに、優秀さゆえに会長がひきとった千裕様はご自分がおなかを痛めて産んだ子供たちの妨げになると思っておられるのでしょう。

裕文様は他のおふたりのご兄弟よりも、奥様にベッタリだったらしいです。」



「へぇ・・・お仕事している感じでは、そんなにマザコンっぽく感じなかったけど。
あ、私のことは何か言っておられましたか？」


「いえ、私も不思議に思っているのですが、ひかるさんは職場が変更になりましたと報告したら、わかりましたとだけ・・・。」



「いっしょに働いてほしいって言ってたのは、ウソだったのかなぁ・・・。
そんなふうには見えなかったけれど・・・。

あら？ところで・・・吉岡さんって私に敬語使っていませんか？
雰囲気がどうも違うので、調子がどうも狂っちゃいます。」



「いいんですよ、これで。
千裕様からのご命令でもありますので。」


「私は帰りのお買いものをいっしょにした吉岡さんと会話したいです。
ひかるさんとかひかるちゃんって呼んでほしいし。
いちばん尊敬できる女性の先輩なんですもの。
ほんとなら私が命令されるべきなのに・・・」