元気あげます!

「やっぱり、裕昭さん・・・じゃなかった裕樹さんって千裕様のお兄さんだったんだ。」


「わかってた?」


「ううん。声が似てるなって最初思ったけれど、フラフラあてもなく歩いて、偶然上着をかけてくれたのが裕樹さんじゃなかったら、私はとっくに身も心もボロボロになってたと思う。

幸恵さんが、たまに裕樹さんにくってかかってしまったり、泣きだしたりして、私にお互い苦労するわね。っていうから、ちょっと・・・」


「なるほどね・・・。それでさ、兄貴がついに役所を退職するっていいだしてね、俺の下で働きたいっていうんだけど、それは断った。
わからないこととか教えるのはかまわないけど、兄貴は長男だからね・・・いずれ、俺が苦手としてる金融系を全部譲るつもり。」


「じゃ、千裕様は?裕文様は徹底的に事業で戦って勝つって言ってたわ。」


「いいんじゃない。堂々とやるなら・・・。それで、負けたって俺は気にしないよ。
兄貴に一社員として就職させてもらってもいいしね。

それとも、ひかるは社長夫人にどうしてもなりたいとか・・・?」


「どうして?千裕様は以前、私を優秀な秘書とかメイドにするって言ってたはずなのに・・・。」


「それじゃ、裕文と変わらないだろ。
ひかるが屋敷にきて、俺の書斎でいつもがんばってる姿見てて、俺の方が考えさせられたんだ。
俺は、誰のために、何がいちばんやりたかったんだろうって。
親父の命令のままに、とりあえず会社をつぶさないようにすることがしたかったんだろうか?って。

ひかるが裕文の手伝いをしたあの会議場で、俺は自分の会社の重役から不信任案をたたきつけられた。

会社は安定させればいいってもんじゃなかったんだよな。
ライバル会社と戦ってでも、社員の幸せを勝ち取る力が必要なんだ。
俺をたててくれるみんなの幸せを守るためにね。

痛かった・・・。冷静に考えたら、ひかる1人さえも、泣かせてばかりだ。」


「私は、大丈夫です。ほんとに・・・。
正直いっていいですか?・・・私は、さえないメガネにダレっとした白衣の千裕先生が好きだから・・・。

あ、実業家の千裕様はすごくステキです。でも、私には手の届かない人だったから・・・。」