松田はすっとんで保健室を出ていきました。
「もう出てきたらどうなんだ。」
「・・・・・。」
「俺がそっちに行ってもいいけど、1年坊主と比べられるのは嫌だからな。
いい加減に、出てこい。ひかる。」
「どうして・・・どうしてもっと早く助けてくれなかったんですかぁ!!!
千裕せんせーーー!」
ひかるは涙をぬぐいながら、ベッドから出てきました。
「ごめん・・・処置室にいたんだけどさ、じつは・・・こうだから。」
千裕は右の手首に包帯を巻いていました。
「どうしたんですか?」
「ちょっとした乱闘騒ぎにまきこまれて・・・名誉の負傷。かな。
松田にいちばん隙ができたときじゃないと、きき手が使えないと逆襲されることもあるからな。
タイミングよかったから、この手でもハッタリきいただろ。」
千裕がにっこり笑ってひかるに手を見せると、ひかるがうつむいていました。
「ひかる・・・。よし、これからエスケープしよう。」
「先生、今5時間目始まったとこなのに、だめですよ。」
「俺もまさか、こんなことになってるとは思わなかったけど、普通にやってたんじゃ、落ち着いて話もできないだろ。
昼休みは1ねん坊主に襲われてるわ、放課後は弟が乗り込んでくるわ、空きの多い日はトラブルだ~会議だ~~~って・・・ほんとにストレスたまりっぱなしで・・・。」
「でも私・・・行けません。」
「ひかる?」
「いつも助けてくださる千裕様には、お礼を言いつくせないくらい感謝しています。
でも、今の私は千裕様とは同じ所へはいけないんです。
私がわがまましたら、必ず不幸になる人がいるんです。」
「だから、俺がひかるを守っていきたいって言ってるのに!
ひかるは何にも心配する必要なんてないんだ。
帰ってくればいい。」

