前日は仕事が終わって吉岡に挨拶にいくと、小声で

「使ってね。」といわれたひかるでした。


帰宅してから吉岡に渡された携帯電話を開けると、取引先らしい会社数社の電話番号と吉岡の番号。
そして千裕の携帯番号とメールアドレスが登録されていました。


「吉岡さんったら・・・。あ、もしかして・・・千裕様が吉岡さんに・・・。
吉岡さんに私のこと・・・。でも・・・まさか、そんな。
裕文様がいるし、吉岡さんはこれだって裕文様に隠れてだったもの。

どうなってるの?わからない・・・。そうだ・・・。」



ひかるは千裕にメールを送りました。

『吉岡さんの会社に私が入るように仕向けたのは千裕様の作戦だったのですか?』


しばらくして、千裕から返事がきました。


『おつかれ。質問の答え=NO すべては吉岡さんの策略だ。
この返事は電話のみ受け付けることとする。』


「もう!・・・」


ひかるは少しどきどきしながら、電話をかけてみました。


「もしもし・・・」


「違う世界に追いやられた千裕クンですけど・・・」


「やだっ・・・子どもみたいですよ。」


「ひかるお姉ちゃんが補習しに来ないから僕は子どもになってしまうんだぁーーー!
くくくっ」


「なんですか?」


「裕文に囚われるなよ。あっ・・・その携帯の電話帳の俺の名前を変更しておいてくれ。
じゃないと、裕文に見つかるとやばいだろ。
他の知ってる人にも・・・。」


「はい、女の子の名前にでも変えます。あの・・・裕文様がこれからのプレゼンと資料作成をまた開始していますけど、千裕様は大丈夫なんですか?
私が裕文様のサポートをしたら痛いって言ったでしょう?」


「痛いよ。優秀な俺の秘書を横取りされた上に攻撃を受けるなんて、痛すぎる。
いや、冗談抜きで、痛かったよ。あんな完璧にやられたらね。」


「わ、私は・・・ごめんなさい。」


「泣くな。苦手分野で攻撃されて負けてしまった俺なんか、ひかるはもう相手にしたくないかな?」