「えっ、まだ仕上げていない分もやってから・・・」


「宿題あるんでしょ?あまりにここに残られても、吉岡さんから怒られるのは僕ですからね。」


「そうなんですか・・・すみません。三浦さんの説明受けてからやってみると、思っていたより、すごく仕事がはかどるのがうれしくて。
じゃ、明日もよろしくお願いします。」



そして、幸恵のアパートへと帰宅。

だんだんこの生活に慣れていくひかるでした。

ひかるは最初の給料をもらうと、幸恵に生活費とお世話になった分をたしてお金を支払いました。


「そんな急がなくてもよかったのに。」

「払わないと私が心苦しくなっちゃうので。」



幸恵は三崎の家から生活費はもらっているので、ひかるから給料なんてもらう道理がないと思っていましたが、ひかるは事情を知らないし、まっすぐに支払おうと向かってくるため、とりあえずお金は受け取ることにして、ひかるのために貯金することにしました。


裕樹は幸恵から話をきいてクスクス笑いました。

「ひかるちゃんも律儀だけどさ、おまえって・・・」

「なっ・・・なによ。」

「いや、ごめん。ひかるちゃんと似てるっていうか・・・貯金って・・・ひかるちゃんのお母さんみたいなことやってるからさ。あはは・・・」


「いいでしょう!確かに、最初はなんで他人の面倒なんてって・・・思ってたんだけど、あの子見てると、毎日生きて行かなきゃ!って気持ちにさせられちゃうのよ。
それと、何も言わないけど・・・彼のことを大切に思ってるのも、いじらしくて。」


「そっか。僕には感じないけど、千裕のこと気にしてるんだな。
あのさ・・・先のことなんだけど・・・幸恵に頼みがあるんだ。」


「なに?」


「ひかるちゃんがもし、三崎の家の人になれそうだったら、僕は実業家になろうかと思って・・・。器じゃないのはわかってるけど、千裕にこれ以上苦しみは与えられない。
それで・・・そのときは幸恵にもいっしょにきてほしいんだ。

両親には幸恵とひかるちゃんをきちんと認めてもらう。
吉岡さんもそのときは優秀なスタッフかためて応援してくれるっていうし、がんばれそうな気がするんだよ。

幸恵は嫌かな・・・やっぱり。」