年末、そしてお正月と何かと会社中心の三崎家はみんな多忙でお屋敷はひっそり状態で時間が過ぎていきました。


千裕の補習もさすがに、この時期は留守が多くなり、ひかるは高田について掃除をしたり、日の丸の旗や門松など、季節の仕事に追われました。


「クリスマスのあの出来事はいったい何だったのだろう?」・・・「もしかしたら、あれは夢?」みたいな感覚もして、ひかるはちょっとさびしく暮らしていました。


卒業式の時期がきても、千裕の姿は学校にはなく、副学長が卒業証書を北橋たちに渡すという状況に、ひかるは高田にたずねました。


「千裕様は卒業式もお出にならないんですか?」


「ええ。金融部門の方が3月はとても多忙ですし、しっかりと帳簿のチェックをしなければならないのです。
社員をたくさん抱えていますのでね、不祥事などあれば千裕様のクビはもちろん、旦那様の地位も危なくなってしまいます。

学校の方は、今すぐ、学院長ですと千裕様が出ていくのは得策ではありませんし、こんなことを言うのは何なんですが・・・千裕様の息抜きの場所です。」


「そ、そうなんだ!・・・すみません、そうなんですか。」


「大丈夫ですよ。千裕様は優秀な方ですから、早急に片付けてもどって来られると思います。
あ、そうそう、今日からあなたといっしょに研修する執事が来るんでした。」


「しつじ?」



「ええ。先月まで銀行の融資係を担当していた者なんですが、ちょっと、精神的に追い詰められましてね、千裕様がリフレッシュ目的で私に面倒を見てくれと頼まれるものですから。」


「へぇ・・・じゃ、えりーとって言われるような人でしょうか。」


「そうですねぇ。営業をやる人間としては、かなり不器用な人物だと、私は思います。
年齢は下でもひかるは先輩ですから、面倒見てやってください。」



「はいっ、がんばります!」



お昼前、噂の人物が屋敷に到着して、まずは食堂で昼食をとりながら、顔合わせとなりました。