「おかえりなさいませ。」


初対面となるフランス帰りのその人は、玄関を入るなり、ひかるに声をかけてきました。


「君がうちのメイドさんだね。久しぶり・・・というか新鮮だね。
やっぱり自宅に女性がいるのはいい。
千裕からきいていたから、会えるのを楽しみにしていたけど、かわいい人ですね。」


「えっ・・・そんな・・・ありがとうございます。」


「フランス人女性もかわいらしい人が多いんだけど、ほら、背が高いでしょ。
日本人男性の僕としては、ちょっとね・・・あっちの男と比べると子ども扱いされちゃってさ。
かわいがってもらうのはうれしいけど、そればっかりだとね。

やっぱり日本はいいよ。あ、えっとなまえは?」


「水口ひかるです。」


「ああ、ひかるさん。・・・うちの学校に入ったときいたけど、文化祭の予定ある?」


「文化祭の予定っていいますと・・・?」



「何かに出演するとか、いっしょに見てまわる友達とか恋人がいるとか?」


「い、いえ、出演しませんし、まだ誰ともまわる予定もたてていません。」


「じゃあさ、僕が案内するよ。学校の文化祭には僕の会社からいろいろ出してる物があってね。
どんなふうにみんなが活かしてくれてるのか、見たいんだ。
つきあってくれないかな。」



「えっ・・・でも・・・そういうお誘いは千裕様にきいてからじゃないと・・・。」


「千裕はあいかわらず細かいんだなぁ。じゃあ、千裕から許可をとるから、許可が出たらよろしくね。」


「はい。」


淳裕はにこにこ顔で、家の中をツカツカ歩いて行ってしまいました。