「あ、私べつに、そこまでしてもらわなくても・・・」


「あのな、あまりにおまえさんがみすぼらしい格好でうろつくと、本業に支障が出るんだよ。雇い主がバカにされるだろ。」


「そ、そうですよね・・・すみません。私、使用人としての自覚がないですね。
お給料をお父さんが持って行ってしまったから、雇われてる印象が薄いんです。
でも、甘えてはいけなかったです。これから気をつけます。」



「どうした?何かあったのか?バラ園にいたときの元気がないな。」


「いえ、別に何も・・・補習もできる範囲で自分でしますから、千裕様は早く就寝なさってください。」


「ひかる?なんか変だぞ。何を遠慮している?」



ひかるは他の使用人たちの話をきいていて、自分ひとりに千裕の少ない休み時間を割いてもらっていることを申し訳なく思っていました。
忙しいとは聞いていたけれど、寝る時間もない程だとは思っていなかったのです。
それに、社員たちの期待も大きく、千裕にかかる負担というのはどんなに重いものなのかとやっと考える時間ができたのです。


「今までがわかってなくて、遠慮がなさすぎたんです。すみませんでした。」


「だから、なぜ謝る?俺を認めさせるほどの逸材になるんじゃなかったのか?」



「そう・・・なんですけど・・・でも・・・」


「じゃ、補習だ。先に渡しておいたプリント全部出してみろ。・・・・・なぁぶっちゃけ言うけどさぁ・・・俺はほんとに疲れてるときは、昨日みたいに寝てる。
やりたいと思うから、補習もしてる。
ウソはついてないのはわかるか?」


「はい。」


「ある意味、おまえに偉そうにもの言ってるのもストレス解消になってるんだと思う。
あ、いじめて楽しむ趣味があるって意味じゃねぇぞ。
おまえの面倒をみるにあたって、勉強部分を背負ったのは俺自身だ。
嫌だったら、弟にふったり、部下にふればいいだけのことだしな。
けどな、俺から直接習う限りは、次の定期テストから相応の点数もとってもらわないと・・・どうするかな。」