年が明けて、ひかるはフランスへ旅立つ準備を始めていました。


「さっきから見てると、ひかるの洋服って今までよりずっとかわいいというか、華やかというか、趣味が変わったんじゃないかと思うんだけどさ・・・。」


「あぁ。私、フランス女性に比べてかなりちっちゃいでしょ。
だから、琴美さんが日本で日常服は買っておいた方がいいって買ってくださったの。
私の趣味だと地味だとおっしゃるものだから。」



「げっ・・・どうりで。いつもはわりとシックな感じの冬服か制服しか俺は知らないからなぁ。
しかしなぁ・・・。」



「何?とくに用事がないなら、千裕様は出て行っててもらえませんか。
下着とかも詰め込みたいし。」



「あ、ごめん。休みの日にいっしょにいられるのは、今日くらいだから・・・つい。」


千裕はひかるに背中を向けて話していました。



「なぁ、気になるから聞くけど、おまえが勉強するあっちの専門学校やパティシエの師匠を裕文が手配したって琴美さんからきいた。
なんで、俺に何も相談してくれなかったんだ?」



「あ・・・琴美さん、裕文様がって言ったの?
私は琴美さんに言われて、やりたいと思うことを紙に書いただけなの。
それをお父様とお母様が私のために調べてくださったり、準備してくださって。

だから、千裕様には頼むことがなくなっちゃって。
ごめんなさい。」



「親父たちが!・・・なるほど。陰ながら応援したいということか。
ただ・・・どうしてあっちの学校管理者の名簿に裕文の名前があるのかがひっかかる。
あいつ、どういう手を使ったんだ?」



「私は裏の事情はぜんぜん知りません。でも、6月くらいに裕文様が琴美さんのお屋敷にしばらく滞在しながらお仕事するって聞きましたよ。」



「な、なんだと!! どうして早く言わなかった。」



「だから、私も昨日聞いたばかりなんですってば。」



「なんか・・・すご~く、俺たちを引き離そうとしている力を感じるんだけどなぁ。」



「私は大丈夫ですって。琴美さんも言われてたけど、千裕様は心配しすぎです。」