「こ・・とみさん・・・。私・・・」



「あ、まだ泣かないでちょうだい。お父様は先にフランスに行ってもらってるから、連絡先を教えるわ。

千裕も、ひかるのお父様が側におられた方が安心よね。ふふふ」


「あ、はぁ・・・。そうですね。」



「はい、ということで、家族会議はおひらきよ。
隆裕、ひかるは私がみっちりと育てるんですから、文句はないわよね。」


「お母さんがそうおっしゃるなら。期待しています。
いえ、少し、ひかるさんがうらやましいかな。
私はお母さんが実業家でひとりで食事をするのがさびしかったですからね。」


「時代が変わったということよ。あんただって、息子たちは愛する人と幸せになってくれたらと思っていたんでしょ。」



「ええ。会社とプライベートは別にして生きていきたいとずっと思っていたのは私ですからね。
おかげで、沙代子にも千裕にもつらい思いをさせすぎました。」



「沙代子さんもちょっと気の弱い息子をまだ捨てないでちょうだいね。」


「そんなぁ・・・捨てるなんて。
私も裕文の思いを知らないまま、甘やかしてばかりで・・・真実から目をそむけすぎていました。反省します。」




三崎家にあったわだかまりや誤解がかなり減って、場がなごやかなクリスマスパーティーとなりました。

ひかるは琴美からきいた連絡先に電話をして、父と久しぶりに話をすることができました。
そして、千裕と結婚を前提にお付き合いするということも伝えました。



裕文は千裕に誤解していたことを丁寧に謝罪していいました。


「真実を知らないままずっと恨んでいてすみませんでした。
これからは、正々堂々と、競争するところはぶつかっていきますからね。」


「おぉ。でもなぁ・・・俺、とくに金融系は苦手だからなぁ。
学校関係と福祉の方を担当くらいでいいんだけど・・・。」


「まぁそういわないで。兄さんとはまだ言いませんよ。
千裕には僕の壁でいてもらわないとね。

仕事で勝って、僕がフランスへ行くこともありかと。ふふっ」