「まぁ・・・外ですれ違ったあのお嬢ちゃんがやっぱり光子さんの娘さんだったのね。
もう、光子さんそっくりな顔してるから、びっくりしたのよ。

それにしても、人の縁って不思議ね。
あの日、あんたを引き取る前にどうしても、執事に任せておけなくて、お忍びで施設まで出かけていったけれど、草ですべって小さな水路に落ちてしまったのよねぇ。

その上雨まで降り出して、施設への地図もなくしてしまって、寒くて困っているところを光子さんに助けてもらったの。

仕事の帰りに娘を施設まで迎えにいくからって、着替えさせてもらっていっしょに施設へいって、千裕くんのお母さんとも会えたわ。
それが最初で最後の話をしたときだったけれどね・・・。」



「琴美さんはひかるのお母さんに恩があったんだね。
僕はお金持ちの家なんて入るのが怖かったから、体の弱った母さんを余計に困らせてしまうような発言をしてたよ。

でも、そんなことしてちゃいけないって思わせてくれたのがひかるだった。
僕の恩人であり、その頃から最愛の人だったのかもしれない。」




「やっぱり親子なのね。優しいお嬢さん・・・そしてあなたもね。
どっちも優しい子だから我がままなんて言えないのね。」



「わがまま?・・・そっか。自分自身のこととなると、ずっと黙っていた。
やっぱり、言いづらいのかな。」



「そうね、自分にかかる費用から生活全般に何から何まで、千裕くんに管理されているんですものね。
私でも、がんじがらめのそんな鎖を切りたいと思うわよ。」




「ちょ、ちょっと待って。ひかるを管理しようなんて思ってません。」



「あんたがそうでもね、ひかるちゃんはその前どうやって暮らしてきたのかしら?
お父さんの収入もままならない状態で、学校をやめてアルバイトして強く生きてきたのでしょう?
生活は苦しかったけれど、誰のものでもない自分を自分の意思でコントロールして生きてきたんじゃないの?

生活は楽でも、学校へ行きなさい、卒業しなさい、補習に来なさい、働きなさい、俺のものになりなさいじゃねぇ・・・。」