「え・・・どうして、ここに?」


信之は驚いて、ひかるに質問すると、ひかるはそれはこっちのセリフだと言い返しました。


「ここでは何だから・・・トレーニングやりながら、話すよ。」


「うん。」



信之は家出してから、アルバイトを転々とし、その日生きて行くことだけで、精一杯だったと話をきりだしました。
そして、とうとう、風邪をこじらせて三崎のトレーニングジムの前で倒れてしまい、そこの事務長に助けてもらったのだと。

体を回復してから、体格もいいのだからということで、トレーニングジムで働くようになり、資格も取らせてもらって、現在、このビル内のクラブで働いているということでした。


「おまえには苦労かけてすまない。
でもな、ここの仕事するようになってから、少し貯金もできるようになってな。

そういえば・・・家がなくなってた。今どこに住んでいるんだ?」


ひかるは兄に、現在までのいきさつを話しました。
父がひかるの一生分に近い給料を持って失踪していることや、千裕にとても世話になっていること、三崎の家の内部のこと、軟禁生活していること。



「でもな、ここでも出てくることができて、俺に出会えたってことは偶然だとは言い難い話だと思う。」



「でも、ビルから出ることができない以上、千裕様のお屋敷ではどうなっているのかが心配で・・・。」



「ひかるは千裕様が大切なんだな。
少し連れ出すくらいならできると思う。」


「ほんと?」


「ああ、ここでトレーニングしてサウナやジャグジーでリフレッシュしてエステもしていることにすれば、かなり時間は稼げるだろ。
それから夕方にはもどってくればいいんだ。」



「でも、出られるかな?見張られてるみたいだし。」




「俺も出るから、女性のインストラクターの服を着ていっしょに出ればわかりづらいと思うよ。」


「うん!」