壁に体を沿わせ、様子を伺うようにじっと静止する。

あれ?

何も聞こえなくなった。

そう思った瞬間。


「何やってるの? 」


………

後ろに人の気配が現れて、頭の上で少し高めの声が聞こえてきた。

恐る恐る振り返ると、壁に手をついて片足重心で立っている男子生徒がいた。

こ、こ、こいつは……

学校中のアイドル、浅香直斗!


「もしかして、付けて来たの? 」


明らかに不機嫌そうな雰囲気。


「そ、そんなわけないじゃん!私は別に……興味ないから 」


言いながら段々と語尾が小さくなっていく。

じっとこっちを見ながら、ふと浅香くんの表情が変わった。


「あんま見ない顔だな。名前、なんて言うの? 」


「菅谷 麻里也…… 」


小さく答えながら、チラッと彼を見る。




《14へ》