「…おいコラ。」



突き出した、両手。ベチッと触れて止まった場所は男の子の顔。正確に言えばおでこの辺り。



開いた口からふぁ…っと体内に酸素をすかさず送り込むあたしの頭上から、顔を押さえ付けられたままの男の子が低くドスを利かす。



ハッとして、さらに押さえ付ける手にグググッと力を入れて真っ赤な顔を背け唇を開くあたし。



『だ、だだだって…っ嫌…!』

「何がだよ。」

『…っ舌…っ。』

「あぁ、ベロチュー嫌いだっけ。」

『…そ、そうです…!』

「ふぅん。でもこれ礼だし。」

『ふぇ…!?』

「お礼って、相手が喜ぶことしなきゃだろ?あんたの主張はいんねぇの。」



分かった?なんて、言ってることがむちゃくちゃだ。強引すぎる。この男、かなり自己中。嫌だって言ってるのに。



しかもお礼って何!?聞いてないんだけど!



思ったことを言葉にしようと口が動くけど、それよりも男の子が自分の顔にくっ付くあたしの手を退ける方が早かった。



瞳に涙を浮かべるあたし。あたしを見下ろす男の子は酷く妖艶。



唇が触れ合うのはすぐそこの未来だった。