「政樹は…?」

政樹がいないことに唐突に不安を感じるとあたしは、胸騒ぎがした。

「…政樹もいるの?」

「うん…。一緒にグアムに来たの…。」

「俺も奈緒と一緒だった…。」

「彼女の…?」

「うん。」

奈緒は春の彼女。正直苦手なタイプだった。あたしとは性格が反対の子だったから。

「そうなんだ。心配だよね。ここに居てもしかたないから、移動しない?」

あたしは、春の返答を待たずに歩き出した。

「相変わらずせっかちだな。」

あたしは返事もせずに海岸沿いを足速に歩いた。暗い森に入るのはなんとなく躊躇ったから。