「……“顔”解除」


カチャ……と縁ありの分厚い眼鏡を下を向いたまま外す。



「…………“霊力”解除」



小さく呟くように言うと、まわりの空気がドクン…と大きく鼓動を打った。



風が吹いたわけでもないのに…
サラサラの黒髪がフワリと揺れる。










そして最後に告げた。










「“神崎杏樹”………解」









ゆっくりと顔を上げていく。







口元にはほのかな笑みが浮かんでいた。







そこにいたのは―――…







「お待たせいたしました。何しろ“あの世”は遠いですからね」



ニッコリと笑う………



杏がいた―――――。